風の音

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

家族の証〈しるし〉

※ このお話は原作とは違う設定です。
  さらに、親(岩圭)と子(夕鈴)のお話になっています。
  読む際はご注意くださいませ。

2015/09/25 ≪花嫁→正妃≫

****** ▼ 追記記事 ▼ ******

夕鈴が正妃になることが正式に決まってしばらくしたある日。
「僕、どうしても行きたい所があるんだよね」
陛下が笑顔で言った。
夕鈴はどこですか?と首を傾げ、李順は深く長い溜息をついた。

*  *

「行きたい所って・・・」
「そう!ここ!」
呆然と立ち尽くす夕鈴に、陛下はにっこにこ笑顔を投げかける。
「私の実家ですよね・・・ココ・・・」
夕鈴には見慣れた我が家。懐かしささえ感じる。
「うん!」
陛下の頭に耳が、お尻に尻尾が見える夕鈴は目をこする。

―――疲れてるのかしら・・・私・・・

一通りのお妃修行を経て、今は正妃になるために避けては通れない重要な儀式の練習中。
夕鈴は朝から晩まで練習詰めだ。

ガラッ

「姉さん、おかえり。李翔さん、いらっしゃいませ」
青慎に迎え入れられる。
「青慎、今日の事知ってたのね」
すんなり二人を家に入れ、驚いた風もない弟の態度で夕鈴は悟った。
青慎はちらりと陛下を見て
「う・・・うん。実は李翔さんから手紙をもらってたんだ」
申し訳なさそうに言う弟を夕鈴が責められるはずもなく
「ただいま」
ぎゅうっと弟を抱きしめた。
食卓には岩圭が座っていた。
「父さんっ!いつも私が帰ってくる時はいないのに、珍しいわね」
「う・・・すまん。」
岩圭の隣に青慎、岩圭の前に陛下、その隣に夕鈴が座る。
沈黙と妙な空気が流れる中、陛下が口を開いた。
「今日はお時間ありがとうございます。実は『李翔』という名は仮の名で、私の本当の名前は『珀黎翔』と申します」
つらつらと淀みなく話す陛下に
岩圭は 若いのにしっかりした人だ と
青慎は ん? と
夕鈴は ギョッ として陛下を見つめた。
「お嬢さんをお嫁にください!」
「「「ええーーー!?」」」
汀親子は口を揃えて叫んでいた。
「あ・・・あの、お役人さんと伺っているんですが、うちの娘で良いんですか・・・?」
「と・・・父さん!この方はお役人じゃなくて、国王陛下だよ!」
青慎がわたわたと父に告げる。
と同時に、
「ちょっ・・・いきなり何言ってるんですか!!」
「やっぱりお嫁さんのご家族にはきちんとご挨拶をしないとね」
こちらでは夕鈴がわたわたとしている。
混乱が少し収まってから
「あ・・・あの~」
岩圭は少し背を丸め陛下を見る。
「青慎君の言う通り、私はこの国の国王です。夕鈴さんを正妃に、と話を進めています。今まできちんとお話しできず申し訳ありません」
岩圭は頭を下げる青年をポカンと見つめた。

―――こ・・・この人があの『狼陛下』?
   何かの間違いではないのか?
   そもそも娘が正妃!?
   有り得ない・・・!

「陛下!頭を上げてください!!」
慌てた様子の夕鈴を見て岩圭は本当なんだと思った。
でも、なかなか頭は付いていかず、今見ている景色は幻だというように白い靄がかかって見える。
「・・・少し、娘と二人きりにしてください」
岩圭は静かにそう言った。

*  *

今夜は月が明るい。
その為、星はほとんど見えない。
風が蝋燭の火を揺らし、それに合わせて影も揺らぐ。
「・・・夕鈴、脅されてるのか?」
少しの沈黙の後、岩圭が口を開いた。
「はあ?」
夕鈴から素っ頓狂な声が出た。
「あ・・・いや、お前の意志なのか知りたくて」
「勿論、私の意志よ」
岩圭は夕鈴の瞳を見つめる。
「あの方はこの国にとって大切なお方だ。この先、お前以外の妻を娶ることだってあるだろう。命の危険だってある・・・。ここで過ごしていた時とはきっと違う生活が待っている。お前にその覚悟はあるか?」
いつものほほんとしている岩圭の今まで見たことのない真剣な顔に、夕鈴は空気が締まるのを感じた。
「うん。覚悟はできてる」
夕鈴のまっすぐな眼差しに岩圭は頷く。
「母さんが早くに死んで、お前には幼い頃から苦労をかけてすまないと思っている。だからこそ、誰よりも幸せになってほしいと思っているよ」
「・・・・・・私は幸せよ」
温かい涙が流れる。
「・・・そうか」
ならいいんだ、岩圭は自分に言い聞かせるように小さくそう言った。

*  *

次の日。
「父さん、借金しないようにね。青慎、勉強頑張るのよ」
「夕鈴、嫁いでもここはお前の家だからな」
「うん」
夕鈴は大きく手を振って家族と別れる。
「やっぱり夕鈴の家族はあったかいね。道理で君がそういう子に育ったわけだな」
「そうですか?普通ですよ」
朝早いので人はほとんどいなくて、少しひんやりとしている空気が凛としていて清々しい。
「夕鈴、ごめんね」
突然、しょぼんとする陛下に夕鈴は少し驚いて。
「何で謝るんですか!」
「だって・・・仲良しの家族と離れ離れにしちゃって・・・。でも、僕はもう君を手放せない」
強い瞳で見つめられる。
「どんなに離れてたって変わらず家族です。これからは貴方と私が家族になるんですよ。寂しくなんてありません」
朝日に輝く夕鈴の笑顔に陛下は目を細める。
「ありがとう。君の家族になれるなんて僕は幸せ者だな」
ふわっと抱きしめられて、夕鈴はそっと手を陛下の背にまわす。
「ずうっとお傍にいさせてくださいね」
「うん。ずっと傍にいてね」
お互い愛しい人の香りに包まれる。


見知らぬ二人が出逢って惹かれ合って 家族 になっていく。


スポンサーサイト

*** COMMENT ***

コメントの投稿

管理人にだけ読んでもらう

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。