風の音

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夢で逢えたら

つばき様へ

2011/01/15(初出) 2015/10/05(加筆・修正) ≪臨時花嫁≫

****** ▼ 追記記事 ▼ ******

『男の方って甘えられるのもお好きなもの・・・ですわ』
氾紅珠に言われた言葉がぐるぐると頭の中を回っている。
何故かこの状況で。
他国の使者との面会。陛下の隣に座らされた私は、逃げられないように陛下に腰を引き寄せられている。
逃げるどころか身動きさえも取れない。
「どうだ?夕鈴」
いつもより間近にある陛下の顔にドキマギしてしまう。
「綺麗ですわ・・・」
目の前に広げられている贈り物の数々を直視できずに答える今の私の精一杯の言葉。
お妃様に見えるように陛下に笑みを向ける。
「そうか。君が喜んでくれるなら私も嬉しい」
向けられた笑顔に心臓が跳ねる。

 落ち着け!私。

いつもより甘い言葉。甘い表情。甘い仕草。
私に向けられるそれらは全て演技なのだけれど、ドキドキとする。
「ふぅ~」
面会が終わって体の力を抜く。
それでもまだドキドキとしている。

 心臓に悪いわ・・・

「君はいつまで経っても初々しくて可愛いな」
狼陛下にギョッとする。
キョロキョロと周りを見渡すけれど、私と陛下以外はいない。
髪の毛をくるくると遊ばれて動けなくなる。
「でも、最近は少し甘えてくれるようになったか・・・」

 はい・・・?甘える・・・?
 誰が誰に??

頭が回転しなくなる。
「狼陛下でからかわないでください」
ふいっとそっぽを向く。
「仕方ないだろう。こちらも私なんだから」
言われた言葉に固まる。
「今、なんて・・・?」
「『狼陛下』も私だと前に話しただろう」
「私、聞いてませんよ・・・」
自分の声が遠くに聞こえる。

 何か変だ。

「夕鈴?大丈夫?まさか私と夫婦って事は覚えてる?」
「勿論です!臨時の・・・ですよね!」
元気よくそう答えたら、陛下の顔つきが変わった。

 あれ・・・?

「それは僕への嫌がらせ?」
小犬陛下にしゅんとされて焦る。
「あの・・・えっと・・・陛下こそ私への嫌がらせじゃないですか」
あるはずのない犬の耳と尻尾がますますしゅんとしたように見えた。
「僕と夕鈴は本物の夫婦でしょ?」
上目遣いに見られて狼陛下とは違うドキドキを感じてしまう、と同時に自分の耳を疑った。
「ほんもの・・・?」
「そう。ほんもの。」
「えー!!もごっ」
大きな声を出してしまい、陛下に手で口を塞がれた。
「もごもご!んー」
何とか陛下の手を引っぺがして陛下を見る。
「夕鈴、頭でも打った?」
心配そうな陛下の顔にサーッと顔が青くなる。
そっと触った自分の後頭部にはポコッとできたタンコブがあった。
「痛い・・・」
いろんな事が一度に起きて「どうしよう」という事しか浮かばなかった。


何がどうしてこうなったのか分からぬまま次の日になった。

 狼陛下は演技じゃなくて本物

 私は陛下の花嫁

 向けられる眼差しも、言葉も、すべてほんもの・・・

ドキドキすると同時にふわふわとした気持ちになる。
でもやっぱり何かがおかしい。
事情が聞けるのは「バイト」の事を知っている李順さんか張老師の二人だけだ。
もし、これが陛下の悪ふざけ(にしては酷すぎるけど)だったとしたら、この二人以外の人に聞いたら変に思われる。
まずは李順さんに・・・と思うのだけれど怖いので先に張老師に聞いてみた。
「ほう。」
私の話を聞いた老師の反応は驚きとともに面白いものを見つけた子供のようだった。
「あとは、お世継ぎじゃのう。早くお顔が見たいのう」
残りわずかなじじいの望みじゃ・・・と、窓の外を白々しく見ている。
老師はバイトの時もやたら「世継ぎ」と騒いでいた事を思い出した。

 これじゃあ嘘か本当か分からない・・・

後頭部のタンコブは少し引いていたけど、触るとまだ痛い。
そっと擦りながら李順さんの元へと急ぐ。
私の話を聞いた李順さんは無言でメガネの奥からギロリと睨んできた。

 狼陛下よりも怖いかもしれないっ!!

「あ・・・あの~」
「陛下がそうおっしゃるなら・・・」
ギリッと李順さんが歯噛みした音とともに、李順さんの後ろにどす黒いオーラが見える気がする。
「すみませんでしたっ」
バタバタとその場を去った。
「ぶっ・・・」
誰かとぶつかった。
「夕鈴?どうした、慌てて」
「陛下。あのっ・・・何でもないです」
「夕鈴?」
心配そうにかがんで私を覗き込む陛下を見て泣きそうになる。
「思い出せなくてごめんなさい・・・」
ホロホロと涙が頬を伝う。
陛下の首に腕を回して泣いた。
ぎゅうっと抱きしめられて胸が苦しくなる。
「ごめんね、夕鈴」
耳元で優しく囁かれた言葉の意味がよく分からなくて、
陛下の顔を見たいのだけれど強く抱きしめられていて見ることができない。
「どうして・・・」
そんな事を言うんですか・・・?その言葉が口から出ることはなくそのまま意識を失った。

*  *

気が付くと寝台の上だった。
「へーか・・・?」
寝台の横の椅子に腰掛けて書物を読んでいる人物に声をかけた。
外はもう真っ暗で蝋燭がゆらゆらとしていた。
「夕鈴。目が覚めた?」
頬をそっと撫でられた。
「わたし・・・?」
ぼんやりとする頭で今までの出来事を整理しようとするけど上手くいかない。
「夕鈴ね、掃除中に転んで頭を打っちゃったんだよ」
後頭部に走る鈍い痛み。
「1日中目を覚まさなかったから心配したよ。よかった」
「陛下、私は陛下の臨時花嫁ですよね?」
「・・・うん。そうだね」
優しく言われてホッとした反面、心にじんわり黒いシミができる。
「やっぱり夢よね・・・」
「どんな夢だった?」
小さく呟いた言葉に返事をされてドキッとする。

 まさか、言えない。本物の花嫁になってたなんてこと・・・

「あ・・・あのっ。変な夢でしたっ!!」
顔が真っ赤になるのが分かったので、布団で顔を隠す。
「ふうん。正夢になるかもね」
「え・・・?」

 まさか・・・ね

布団から顔をちらりと出すと陛下と目が合った。
ちょっと意地悪な瞳は狼陛下だ。
「お大事に。」
おでこにそっと触れられた手は冷たくて火照った私には気持ちよかった。
再度布団を頭まであげて小さく唱える。
「ゆめゆめゆめ・・・」

 次に目が覚めたら楽しい日々が待っていますように・・・




*≪リクエスト≫
 陛下と夕鈴がイチャイチャしている夢を見た夕鈴

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