風の音

雪の降る夜

moe様へ

2011/02/12(初出) 2015/11/28(加筆・修正) ≪臨時花嫁≫

****** ▼ 追記記事 ▼ ******

「今日は冷えますわね」
夕鈴の元へ遊びに来ていた氾紅珠が窓の外を見ながら言った。
はあ、と吐く息は白く揺らぐ。
「そうね。体が冷え切ってしまう前にお茶でも飲みましょう」
「はいっ。いただきますわ」
笑顔でたたっと駆け寄る紅珠を見て夕鈴は微笑んだ。
以前は『陛下』と『後宮』の話題が多く、陛下に恋をしていた紅珠もあの事件があってからその事を口にしなくなった。
むしろ『狼陛下』を可哀想なくらい恐れている。
今の話題は専ら『お妃様』=『夕鈴』について。
「お妃様のお好きな色は何色ですの?」
「お妃様のお好きなお花はなんですの?」
質問攻めに少々ぐったりするも(答えられない質問もある為、慎重になるからだ)目をキラキラさせて聞いてくる紅珠は活き活きとしていて可愛い。
まるで妹ができた様で嬉しく思う。
しかも、こんなに可愛くて性格も良い子だったらずっと側にいてほしい、と思うほどだ。
ふ、と実家にいる弟の顔が過ぎる。
手紙と仕送りは欠かさずしているけれど、顔を見て話しているわけではない。

 元気かな・・・

いつの間にか「ココ」にいるのが長くなって現実(下町)から遠ざかっていく気がする。
「あの・・・お妃様、どうかなさったんですの?」
紅珠が心配そうに夕鈴の顔を覗き込んでいた。
「あ・・・ごめんなさい。少しぼうっとしてしまって」
「私、この辺でお暇いたしますわ」
ゆっくりお休みくださいませ、そう言って紅珠は帰っていった。

 気を遣われてしまった・・・

少し反省しつつお茶の片付けをする。
侍女たちにやってもらってもいいのだが、なるべく自分でできる事はやらせてもらっている。

 勘違いしないように。

冬の水仕事は辛い。掃除婦の仕事をしている事もあって、手は荒れている。
実家にいるときは手荒れなんて気にも留めなかったのに、今は気になる。
お妃の服は袖が長くて動きづらいので嫌だと思っていたけれど、今は助かる。
陛下の前では手が見えないように袖に隠している。
一息ついて外を見ると雪が舞っていた。
「寒いわけよね・・・」
ゆっくりゆっくり降る雪を眺めていると何とも言えない気持ちになる。
「夕鈴、ただいま」
声のした方を見ると、扉に陛下がもたれ掛かっていた。
陛下に気配を消されると全く気づかない。
「おかえりなさいませっ」
ぼーっとしていた姿を見られたのではないかと思い、ピシッと背筋を伸ばす。
陛下といつもの様に過ごしてもうそろそろ就寝という頃、外を見ると少し雪が積もっていた。
「積もったね」
陛下が外へ出て雪を一握り。
近くにあった南天の実を目に、葉を耳に見立てて雪兎を作った。
「わあ、可愛い!」
私も!と言って夕鈴も雪兎を作った。
少し雪を掴んだだけなのに手が真っ赤になった。
はあ~と手に息をかけて手を擦り合わせる。
そんな夕鈴を見て陛下が後ろから夕鈴の手をそっと包む。
「へ・・・へいかっ!?」
夕鈴は逃れようにも後ろから抱きすくめられている形なので逃れられない。
「冷えちゃったね」
夕鈴の手をそっと擦る。
ふと夕鈴は自分の手が荒れている事を思い出して、手を引っ込めようとしたが「駄目」と陛下に言われてされるがままになっていた。
身体全体が心臓になったみたいにドキドキを感じる。
「もう温かくなったかな」
解放されてほっとすると同時に少し寂しい気がした。
「おやすみ」「おやすみなさいませ」
陛下と別れて寝台に行く。
自分の手が荒れていた事なんてすっかり忘れて、布団の中でゆっくりと目を閉じるとそのまま眠りについた。


朝目覚めると、昨日の天気が嘘のように外は天気が良かった。
「あ、雪兎!」
身支度もそのままに外へ行く。
昨夜、雪兎を置いた場所には何もなくてがっかりした時、目の端に映った白いもの。
2羽が日陰に移動されていた。
陛下の雪兎とそれよりも一回り小さい夕鈴の雪兎。
仲良く寄り添っている姿に自然と笑みがこぼれた。



* ≪リクエスト≫ 雪の降る夜というお話でした

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