風の音

星降る夜に

2015/12/15 ≪花嫁≫

****** ▼ 追記記事 ▼ ******

冬は星が綺麗。
見上げた空は漆黒で、月明かりはない。
星が降り注ぐように瞬いている。
はあっと手に吹きかける息は白く揺らぐ。
陛下から「今日は仕事が立て込んでいて来られない」と連絡をもらっていた。
一人見上げる夜空は少し悲しくて、そんな時は下町にいる家族や友達の事を思い出す。
詳しい事は何一つ話せずに、出てきてしまった。
後悔はしていない。
けど、やっぱり言えないことへの後ろめたさ、みたいなものを感じているのも事実。
目からじんわり込みあがってくる熱いものを、下に落とさないようにじっと空を見上げる。
瞬きをすると落ちてきてしまいそうな『それ』を、必死でしまおうとする。
そんな時、ふわっと肩に掛けられた羽織物。
振り返ると居ないはずの人が、少し悲しげな顔をして立っていた。
「へーか!?な・・・んで?」
驚いて引っ込めばよかったのに、目からポロリと一粒落ちてしまった。
「ごめん。一人にして」
そっと陛下の指が目に触れる。
すんっと鼻をすすって、陛下の胸に飛び込んだ。

貴方にだけは見られたくなかったのに・・・

「身体、冷えちゃうよ」
肩からずり落ちそうになっている陛下の羽織を掛け直してくれる。

欲しかった温もりはココにあるのに、
陛下にあんな表情させて、私は何をしているの?

壊れ物を扱うみたいに羽織ごと優しく包んでくれる大好きな人の顔を見上げた。
紅い瞳が切なげに揺れている。

ほら、汀 夕鈴 しっかりしなさい!
大丈夫だから!

「陛下、おかえりなさいませ!今日はいらっしゃらないと伺っておりましたのに・・・」
「ああ、今宵も君に会いたくて急いで終わらせた」
おでこに ちゅっ と口付けが降ってきた。
何だかくすぐったくて、おでこに手を添える。
「う・・・嬉しゅうございます」
抱きしめあったまま、紡がれる言葉。
「あっ!」
突然、陛下の後ろを指差して叫んでしまった。
驚いた顔の陛下に「ごめんなさい」と謝る。
「どうしたの?」
「あのっ、今、流れ星がっ」
陛下越しに見える満天の星。
そこに一筋の光が見えた。
「ああ・・・今日は流れ星が多くみられる日だったな」
「えっ、そうなんですか?」
首を傾げる私に、にこっと笑う陛下。
「星空観察する?」
「はいっ!」

寒くないようにいつもより多く羽織って、汚してごめんなさい・・・と心の中で謝りながら、地面に敷物を何枚か重ねる。
温かい飲み物とお菓子も準備。
皆を起こさないようにコソコソ二人で準備をするのは、何だかこれから悪戯をするようで楽しい。
敷物にごろんと二人で寝転がって、空を見上げる。
星は変わらず瞬いているのに、自分の気持ちは先ほどと全く違うものになっていた。
隣にいる陛下を見ると、目が合ってにっこり笑顔を返された。
暗くて見えないだろうけど、私はぽふんっと顔を赤くした。
手をつないで流れ星を探す。
少しして陛下が空を指差して「あっ」と言った。
それに反応して自分もそちらを見るが、時すでに遅し。
流れ星は消えていた。
陛下と私、それぞれが何回かそんな事を繰り返していたその時、
「「あっ!」」
二人同時だった。
今まで見つけたどの流れ星より、長くて強い光の流れ星だった。
お互い顔を見合わせる。
「見ましたか?今の」
興奮気味の私に陛下は「うん」と頷いた。
「大きかった」「綺麗だった」そんな感想をお互い言いながら、また空を見上げる。
この一瞬の煌めきを大切な人と見られた、という奇跡に心が熱くなるのを感じた。
寒さなんてどこかへ行ってしまったかのよう。
それから少し観察を続けて、後片付けをして、寝所へ向かった。
一緒の寝台に入り身を寄せ合うと、じんわり身体が温かくなってきて眠りに誘われる。
「また、来年も見ようね」
頬を撫でてくれる陛下の手が気持ちよくて、瞼が下がっていく。
「はい」と私は返事ができただろうか?
遠くない未来の約束に嬉しさを感じ、夢へと落ちてゆく。

その日見た夢は、とても温かくて優しい夢だったように思う。





※ 自然科学研究機構 国立天文台のホームページ http://www.nao.ac.jp/ を参考にさせていただきました。
  少し遅れましたが、ふたご座流星群があったので。


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