風の音

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捕獲 1

※ 『この世の春』 の あさ様よりいただきました!
  コメントの100拍手を踏みまして、リクエストさせていただいたSSです。
  無断転載禁止です。
  あさ様に許可をいただいて、私の宝箱に保管しておきます。

  

****** ▼ 追記記事 ▼ ******

【設定 本誌沿い】
《捕獲 1》



「――――逃げる気か?」
「あ、」

ぞくり。
腰から背へ。
未知の感覚が走り抜けた。






「皆さん、おはようございます。」
「おはようございます、お妃様。」

どこかそわそわと落ち着かない政務室。
頃は冬。
本当の妃になって初めて迎えるこの季節を、夕鈴は少しの戸惑いと共に迎えた。

「この時分は誰もが皆落ち着かなくなる。」
「方淵殿、それはどういう…。」

ことんと首をかしげる夕鈴。
苛立たし気に眉をひそめた方淵の後ろから、水月が現れた。

「試験の季節なのです、お妃様。官吏たるもの皆が一度は受けねばならぬ試練の季節、とでも申しましょうか。私もこの時期になると昔の辛い思い出が蘇って…今日はもう」
「サボるな氾水月。」
「おやおや、これは手厳しい。」

おっとりと微笑みながら後退る水月。
柳方淵は両手に抱えきれぬほどの書簡をこれみよがしに水月の机上に積み上げた。

「これ、全部僕がやるのかい?」
「貴様の出方次第では手伝ってやる。」
「おや、優しいね。」
「貶すか褒めるかどちらかにしろ。」

ニコニコと微笑み続ける水月と噛みつかんばかりの方淵。

「…仲良し、なのよ、ね?」

苦笑しつつ自分にあてがわれた椅子に腰を下ろした夕鈴の耳に飛び込んできたのは、年若い官吏達の会話。

「―――なんでも、章安区の、」
「ああ、えっと、なんていった?父親が下級役人の、」
「汀…青慎、だったか。」
「そう、それだ!」

せい、しん。

「最年少だろ?」
「凄いよなー。」

その後のことは、よく覚えていない。

気付いたときには後宮にいて。
床にへたり込んでいた。


青慎。
姉さん、何もしてあげられない。


「あのー、お妃、ちゃん?」
「……。」

何日間にもわたる試験。
食事だって自分で支度しなきゃいけない。
緊張で具合が悪くなる人だっているって聞いている。
まさか、あの子が今年試験を受けるなんて思わなかった。


どうしよう、どうしよう。


「なあ、お妃ちゃん。陛下に」
「ダメよ。」

陛下には言えない。
あの子の努力はあの子の物。
陛下は贔屓なんてしないだろうけど、それでも。

「そんなことしちゃダメ。近道なんてないんだから。」

陛下には知らせちゃいけない。


捕獲 2 へ続く・・・

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