風の音

一陽来復

2015/12/22 ≪花嫁≫

****** ▼ 追記記事 ▼ ******

「あのっ・・・」
夕鈴は思い切って女官長に数日後、してほしい事を伝えた。

陛下は喜んでくださるかしら・・・

不安が顔に出ていたのか
「きっと陛下もお喜びになられますわ」
と優しい笑みをたたえて言われた。
「はい」
女官長の優しさに笑顔でそう返した。


――― 数日後
季節は冬。
日中、陽が差していても空気は冷たく身体が冷える。
陽が落ちるのが早く、気温はぐんぐん下がっていく。
陛下が後宮へ訪れるのも陽が落ちるのと同じように、少し早くなったような気がして、夕鈴は嬉しく思っていた。
今日も一緒に夕餉を食べ、それぞれ湯殿へ向かった。
「ふう・・・気持ちよかった」
体の芯からぽかぽかして、軽くなったような気がする。
部屋に戻ると陛下がもういて、夕鈴はほんの少し歩を進めるのを躊躇ってしまった。
もちろん、陛下がそれを見逃すはずもなく、つかつかと夕鈴の元へ来る。
「夕鈴」
髪をひとすくいして、それに口付ける陛下から目が離せない。
「今日の湯は、一段と良かった」
「あっ・・・」
夕鈴の口からは言葉にならない声が漏れる。
「君が用意してくれたと聞いたが」
「私は、用意してほしいとお願いしただけです」
夕鈴は両手を胸の前でぎゅっと握りしめる。
今日は冬至。
夕鈴は柚子湯にしてほしいと依頼していた。
「でもですね、まさかあんなにたくさん柚子が浮いていると思わなくて・・・」
そう、夕鈴は少しの柚子でも十分良い匂いがするし、気分を味わえると思っていた。
しかし、『お妃様、直々のお願いとあっては!』と皆が力を入れたらしく、湯殿が埋まるほど柚子が浮いていて、それを見た夕鈴はギョッとしてしまった。
しかもここは王宮。
王と妃の湯殿は広く・・・。
一体どこからこれだけの柚子を集めてきたのか?
夕鈴は湯に浸かりながら頭を捻っていた。
「ここの皆さんはやる事が仰々しいですよ!」
おそらく、陛下の湯殿も同じだったに違いない。
「あーまあ、驚いたけど。夕鈴が皆に慕われている証拠だよ」
「そうだと嬉しいですが・・・」
俯く夕鈴の視界に影が落ち暗くなる。
ふと顔を上げてギョッとする。
「良い匂・・・もごっ」
咄嗟に近づいてくる陛下の口を両手で押さえる。
「何故拒む」
ムッとした声が下りてくる。
「近いですっ///」
ぶんっと首を横に向け顔をそらす。
湯上がりの陛下は何だか艶が増して、見ていられなくなる。
陛下の方はというと、湯上がりで頬がほんのり桃色になっている夕鈴を食べたいと思っている。
その事を夕鈴はもちろん知るはずもなく。
ひょいっと抱え上げられ、寝台へぽすんっと置かれた。
「同じ匂いだな」
優しい口付けが下りてくる。
ここまでくると夕鈴に逃げ場はもうない。


――― 翌朝。
夕鈴は『もう来年は柚子湯はやらない!』と決心し
陛下は『来年も柚子湯をしよう!なんなら一緒に湯殿に入ろう♪』と決心したとか。




※ 冬至に合わせて・・・

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