風の音

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白の思い出

2016/01/06 ≪花嫁≫

****** ▼ 追記記事 ▼ ******

「大好きです!!」
ピンとした空気が流れる寒空の下、大きな声で叫んだ。
寒さで耳が痛く、手も感覚を失ってじんじんとする。
吐く息は真っ白で、風で横に流れては消えていく。
うっすらと積もった雪で世界は白銀に染まる。
時間が止まったかに思える世界にいるのは二人だけ。



白陽国 王都に雪が舞う。
「わあ、真っ白ですね」
積もり始めた雪を見て、にっこりと笑顔で言う夕鈴とは対照的に陛下は複雑な表情を浮かべる。
どうしたのかな?と様子を窺う夕鈴に陛下は苦笑いする。
「あー・・・雪は昔の事を思い出すから・・・」
歯切れの悪い物言いに夕鈴は辺境時代の事かな、と思う。
陛下は辺境時代の事を夕鈴に話さない。
陛下が話したくない事ならば・・・と夕鈴も敢えて聞いたりしなかった。
「陛下、少し先に行っててください」
夕鈴は悪戯を思いついた子供のように、ふふっと笑った。
陛下は夕鈴に言われた通り、夕鈴より先に歩き始めた。
少し歩くと夕鈴が「陛下!」と呼んだので、振り返った。
その瞬間、夕鈴は「えいっ」と何かを陛下に投げた。
ボスンッと陛下の足元に落ちた雪玉。
「あ~届かなかった~」
悔しそうに夕鈴が肩を落とした。
そんな夕鈴を眩しそうに見ながら陛下は愛しい人の名を呼んだ。
「夕鈴」
名前を呼ばれて陛下の方を見やると、

ポスンッ

夕鈴の頭に雪玉がぶつかって壊れた。
陛下が柔らかくふんわりとした雪玉を作ったのだろう、それは当たっても痛くない。
でも、頭に命中した雪玉は、ボトボトと夕鈴の顔へ落ちてくる。
「へ~い~か~」
ぷくうと頬を膨らませた夕鈴は、雪を掴んでは陛下へポンポン投げつける。
その雪を避けることが出来るだろうに、陛下は両手を顔の近くに持っていくだけで雪を受け止める。
「ごめん、ごめん」
笑う陛下につられて夕鈴も笑い出す。
夕鈴は雪を投げるのをやめて、大きく息を吸った。
キンと冷えた空気が、動いて火照った体の中を巡る。
「大好きです!!」
大きな声でそう言って、陛下の元へ走る。
ぴょんっと飛び跳ねて陛下へ抱きつくと、受け止めた陛下は夕鈴の背に手を回して抱きしめた。
次に雪を見た時に、今日の事を思い出してもらえるといいな、と夕鈴は思う。
過去は消えないけど、楽しい思い出をたくさん作って、あの時はこんな事があったね、といつか二人で笑い合えるといい。

王都には珍しく、深々と降る雪はさらに白さを増していく。


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