風の音

愛のかたち

2016/02/14 ≪花嫁≫
バレンタインSS

****** ▼ 追記記事 ▼ ******

「ちょこれいと・・・ですか」
夕鈴の目の前にあるのは、茶色くて四角く小さいもの。
「甘くて美味しいよ」
陛下がチョコレートの入った箱を差し出してくれる。
お菓子らしいのだが、もちろん夕鈴は聞いたことがなければ見たこともない。
恐る恐る手に取り、口に運ぶ。
「わ・・・」
今まで食べたことのない甘味が口いっぱいに広がる。
「溶けちゃいました」
何とも言えない食感。
珍しい異国のお菓子に舌鼓を打ちながら、今日も陛下とお茶をした。

「ちょこれいと、かぁ・・・」
不思議なお菓子だったなぁ、と自室でぼんやり思っていると
「バレンタインじゃっ!!」
部屋の片隅にあった壷からニョキッと老師が出てきた。
老師の突然の出現とあまりの大きな声に夕鈴は驚き、一瞬声が出なかった。
「なっ・・・またそんな所にっ!驚かさないでくださいよ!」
「バレンタインじゃ!」
夕鈴の怒りもどこ吹く風。
老師はもう一度同じ事を言った。
「何ですかその・・・ばれ?」
老師は夕鈴が引っかかった!とばかりにバレンタインについて揚揚と説明を始めた。
「よいか?バレンタインとは、2月14日に女性が意中の男性にチョコレートを渡して告白する日なんじゃ!」
「はあ・・・」
「手作りだと、なお喜ばれるぞい」
老師が何故そんなことを知っているのかとか、自分に言ってくるのは何故かとか、思いながら何となく話を聞いてしまった。
「よいな?2月14日に陛下に告白するんじゃぞ」
「はあ?」
何故そんなことになってしまうのか・・・夕鈴は首を傾げた。
「絶対忘れるでないぞ!」
そういい残して老師はどこかへ去っていってしまった。
「2月14日ねぇ・・・」
今日は2月7日。その日まであと一週間。
「ちょこれいと・・・は高価なものだから用意できないわよ・・・」
ポツリと呟いた言葉に、天井裏から一部始終を見ていた浩大が
「お妃ちゃんが望めば何でも手に入るけどナ」
と答えていたことなど夕鈴は露知らず。
日々は過ぎていった。

*  *

「久々ね!」
腕まくりをして、調理場に立つ。
何だか心が躍るのは、下町の一主婦に戻ったかのように感じるからかもしれない。
老師に言われたから実行するわけじゃないけれど、今日は『ばれんたいん』という日。
何か自分が陛下にできることを!と考えた結果、ここにいる。
久しぶりとはいえ手順は忘れていない。
事前に頼んでおいた食材を前に、手際よく調理と片付けをこなしていった。


「陛下、これどうぞ」
お茶の時間、陛下に包みを手渡す。
「開けていい?」
「はい」
陛下が包みを開けると、そこには
「うわぁ!桃饅だ」
湯気のたった、ほかほかの桃饅頭があった。
陛下はパクッと頬張って「夕鈴の手作り、美味しい~」とにっこり。
「ありがとうございます」
自分の料理をすごく美味しく食べてくれる事が嬉しくて、照れ笑いになってしまう。
「今日は『ばれんたいん』なんだそうです。ちょこれいとは用意できないので、私が作れる甘いお菓子を、と思いまして」
「・・・」

陛下が何も言わないと言うことは、今日がどんな日か知っていると思っていいのかしら?

じっと見られて恥ずかしさが増す。
「で、ですね・・・」「えっと・・・///」

あの時もこんな感じだったな・・・

以前、陛下に告白した時の事を思い出す。
今の自分はきっとあの時と同じ、体中が火照って熱い。

今日は、想いを形にできる特別な日。
それを知ったのは老師の入れ知恵だけれど、素敵な日だなと思ったから。

「陛下、大好きです」

この気持ちも一緒に、受け取ってくださいね。


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