風の音

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桜色前線

2016/02/21(初出) 2016/04/04 ≪花嫁≫

****** ▼ 追記記事 ▼ ******

季節は春。
だいぶ過ごしやすくなってきた今日この頃。
夕鈴は一人、後宮の庭に植えてある一本の桜を眺めていた。
「・・・下町と、おんなじ・・・」
桜は下町と何ら変わらず同じように咲いていた。
“本物の夫婦”になって数か月。
いろんなことがあったけれど、私は私。
陛下が好きになってくれた“汀 夕鈴”でいようと思った。
ゴロンと草の上に仰向けになる。
ここ数日、晴れ間が続いていたから服はそんなに汚れないだろう。
少しヒンヤリする土の感触が気持ちいい。
草や土の匂いを間近に感じ、小さい頃、下町の皆で泥だらけになりながら遊んだ記憶が蘇る。
一本の木なのに、桜の花びらは濃い桃色だったり、白に近い淡い桃色だったりと表情を変える。
不思議だなぁ・・・とぼんやり思って眺めていたら、目の前にフと影ができた。
「夕鈴、何してるの?」
「へーかっ!?」
慌てて起き上がろうとしたら「そのままでいいよ」と言われた。
心臓に悪い現れ方、してほしくないわね・・・と心の中で呟く。
陛下に見下ろされる形になっているため、陛下の後ろには満開の桜の花が見える。
風が吹くたびに揺れる桜の花の間から、太陽がキラキラと降り注ぐ。
それがまた陛下をも引き立たせていて。

綺麗・・・

どれくらいそうしていただろうか。
「君がそんなに見つめてくれるとは、嬉しいものだな」
突然陛下がそんなことを言うものだから、ハッと我に返った。
「そっ、そんなんじゃないです!」
いつの間にか陛下が自分の顔の両側に手をついていて、ギョッとする。
近づいてくる顔に、ぎゅうっと目を閉じる。

ちゅっ

そっと触れるだけの口付けから、優しさが伝わってきて顔が火照る。
陛下を見るとニコッとして、私の隣に仰向けになる。
「はい。夕鈴、どうぞ」
そう言って左腕を差し出してくれる。

ここで腕枕!?
してほしいけど・・・でも・・・恥ずかしい///

キョロキョロと辺りを見回す私に「誰もいないから」とさらに腕を突き出してくる。
「し・・・失礼します///」
そっと、陛下の腕に頭を乗せて、空を見上げる。
しっかりとした腕に、安心感を覚える。
時折吹く、少し強めの風に桜の花びらがひらひらと舞う。
「綺麗ですね」
そう言って陛下を見ると、桜ではなく私をじっと見ていることに気が付いた。
「ああ。綺麗だな」
あまりにも優しい眼差しで、こちらを見てそう言う陛下に自分の顔が、かあっと赤くなるのが分かる。
「夕鈴はさ、下町に帰りたいって思ったことある?」
「私はいつだって、陛下のお傍にいます」
「・・・」
少し悲しそうな陛下の表情に胸が締め付けられる。

嘘は、言えない・・・

「陛下と一緒に見ているからこそ、この景色がこんなに綺麗だと感じるんですよ。他の誰でも駄目で、陛下じゃなきゃ駄目で、私がこんなにも傍に居たいと思うのは生涯、陛下だけです!」
きっと今の私の頬は桜色に染まっている。
「・・・そうか。そうだね!」
そう言って笑顔になった陛下の頬も桜色に染まっているように見える。

「いつか年を取っておばあちゃんになっても、貴方の隣で同じ景色を見ていられるなら、きっとそんな幸せなことないです」

ざあっと吹いた突然の強い風に、桜の花びらが上へ下へと一斉に舞う。
その様はまるで涙のような・・・ううん、二人を祝うかのような花吹雪。

二人、今の幸せに笑った。


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*** COMMENT ***

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えぐち様へ

こんばんは~。
そう言っていただけるのが一番嬉しいです(*^^*)
ありがとうございます!

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ゆらら様

初めまして。
遊びに来てくださって、ありがとうございます。
コメントのお言葉、すごく嬉しいです!
殺伐とした王宮内ですが、陛下と夕鈴にはほのぼのとした日があるといいな、という気持ちで書いております。
また遊びに来てくださいませ。

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