永遠を咲かせる種
2016年07月21日 (木曜日) 14時19分
2016/07/21 ≪花嫁≫
お題サイト → Kiss To Cry 様
「永遠ってあると思いますか?」
後宮の庭の四阿で休憩していると、夕鈴が難しい顔をしてそう聞いてきた。
季節は秋。
涼しくなってきたとはいえ、日中は未だ暑さが残る。
時折吹く風が心地良い。
「急にどうしたの?」
突然の問いに答える前に疑問が湧いた。
「蘭瑶様に言われたんです」
『お妃様は、“永遠”ってあると思いますか?』
「答えられなかったんです・・・。蘭瑶様は答えを教えてくださらなくて」
尚も難しい表情の夕鈴が可愛くて、口元を押さえて笑う。
「それは難しい問題だね」
人には“終わり”が必ず来る。
そもそも、『永遠』なんて確認のしようもない。
「陛下はどう思いますか?」
じっと夕鈴に見つめられて、戸惑う。
何と答えたらいいものか・・・
「ない、んじゃないかな・・・」
今まで生きてきた中で、『永遠』なんて感じたことがない。
「・・・やっぱり、陛下もそう思います?」
どうやら夕鈴と同じ意見だったようで、ホッと胸を撫で下ろす。
「でもですね!私、考えたんです」
グッと握りこぶしを作った夕鈴は、立ち上がり目をキラキラとさせている。
「何を?」
「『永遠』を、です!」
「?」
夕鈴の言っていることが分からないのは、自分の問題だろうかと首を捻る。
「で、何を思いついたの?」
まさか、『永遠』を考えていたとは思いもよらず、夕鈴の相変わらず斜め上をいく発想にお腹が捩れそうだ。
「・・・陛下。何で笑ってるんですか?」
むうっとした顔の夕鈴に「ごめん」と伝えてしばし笑う。
「僕のお嫁さんはやっぱり可愛いなぁと思って」
「何でそうなるんですか///私のこと、馬鹿にしてますね!?」
正直な気持ちを言ったのに、本気にしてもらえないあたりが少し悲しい。
「で、結論は出たの?」
「はい!」
夕鈴に誘われるまま、庭園の一角に来た。
その部分だけ掘り起こしたようで、周りの土の色とは一段暗い、焦げ茶色の土が地面を覆っていた。
「ここにですね、永遠の種を蒔いておきました」
「永遠の種?」
「そうです。春になったら分かります」
どこか自信満々の夕鈴に約束をする。
「じゃあ、春になったら一緒に見に来よう」
「はい!」
嬉しそうに微笑む夕鈴に笑顔が零れる。
春になり、約束の場所へ向かう。
ほのかに甘い香りが漂うその場所には、白・桃色・紫といった色とりどりの花が咲き誇っていた。
1つの茎にたくさんの花がついている。
花は一重に咲いているものもあれば八重咲きのものもある。
「これは?」
「“すとっく”というお花です。遠い異国では薬草にも用いられているそうで、種をもらったので蒔いておいたんです」
「どうしてこれが“永遠の種”だったの?」
ずっと気になっていた。
夕鈴は“永遠の種を蒔いた”と言っていた。
「この花の花言葉は“永遠に続く愛の絆”だそうです。それを聞いた時、素敵だなと思って」
「この花から種を取ってまた蒔いて・・・を繰り返したら永遠にならないかなと思ったんです」
「花は枯れてしまうけれど、種の中にはずっとずっと前の花の思いが詰まっている気がして・・・」
しゃがんで花を見ている夕鈴は優しい目をしていて、自分も夕鈴の隣にしゃがむ。
「じゃあ、毎年種を蒔いて、花が咲くのを君と見よう」
「はい・・・!」
月日を重ねても変わらない夕鈴の瞳の光に誘われるように、口付けを交わした。
それから毎年、種を蒔いて花が咲くのを見つめる二人の姿があった。
年々増えていく花に、二人を見守る周りの者は二人の愛の深さを知り、この庭は大切にされ、狼陛下と唯一の妃の物語は後世に語り継がれることとなる・・・
お題サイト → Kiss To Cry 様
****** ▼ 追記記事 ▼ ******
『永遠を咲かせる種』「永遠ってあると思いますか?」
後宮の庭の四阿で休憩していると、夕鈴が難しい顔をしてそう聞いてきた。
季節は秋。
涼しくなってきたとはいえ、日中は未だ暑さが残る。
時折吹く風が心地良い。
「急にどうしたの?」
突然の問いに答える前に疑問が湧いた。
「蘭瑶様に言われたんです」
『お妃様は、“永遠”ってあると思いますか?』
「答えられなかったんです・・・。蘭瑶様は答えを教えてくださらなくて」
尚も難しい表情の夕鈴が可愛くて、口元を押さえて笑う。
「それは難しい問題だね」
人には“終わり”が必ず来る。
そもそも、『永遠』なんて確認のしようもない。
「陛下はどう思いますか?」
じっと夕鈴に見つめられて、戸惑う。
何と答えたらいいものか・・・
「ない、んじゃないかな・・・」
今まで生きてきた中で、『永遠』なんて感じたことがない。
「・・・やっぱり、陛下もそう思います?」
どうやら夕鈴と同じ意見だったようで、ホッと胸を撫で下ろす。
「でもですね!私、考えたんです」
グッと握りこぶしを作った夕鈴は、立ち上がり目をキラキラとさせている。
「何を?」
「『永遠』を、です!」
「?」
夕鈴の言っていることが分からないのは、自分の問題だろうかと首を捻る。
「で、何を思いついたの?」
まさか、『永遠』を考えていたとは思いもよらず、夕鈴の相変わらず斜め上をいく発想にお腹が捩れそうだ。
「・・・陛下。何で笑ってるんですか?」
むうっとした顔の夕鈴に「ごめん」と伝えてしばし笑う。
「僕のお嫁さんはやっぱり可愛いなぁと思って」
「何でそうなるんですか///私のこと、馬鹿にしてますね!?」
正直な気持ちを言ったのに、本気にしてもらえないあたりが少し悲しい。
「で、結論は出たの?」
「はい!」
夕鈴に誘われるまま、庭園の一角に来た。
その部分だけ掘り起こしたようで、周りの土の色とは一段暗い、焦げ茶色の土が地面を覆っていた。
「ここにですね、永遠の種を蒔いておきました」
「永遠の種?」
「そうです。春になったら分かります」
どこか自信満々の夕鈴に約束をする。
「じゃあ、春になったら一緒に見に来よう」
「はい!」
嬉しそうに微笑む夕鈴に笑顔が零れる。
春になり、約束の場所へ向かう。
ほのかに甘い香りが漂うその場所には、白・桃色・紫といった色とりどりの花が咲き誇っていた。
1つの茎にたくさんの花がついている。
花は一重に咲いているものもあれば八重咲きのものもある。
「これは?」
「“すとっく”というお花です。遠い異国では薬草にも用いられているそうで、種をもらったので蒔いておいたんです」
「どうしてこれが“永遠の種”だったの?」
ずっと気になっていた。
夕鈴は“永遠の種を蒔いた”と言っていた。
「この花の花言葉は“永遠に続く愛の絆”だそうです。それを聞いた時、素敵だなと思って」
「この花から種を取ってまた蒔いて・・・を繰り返したら永遠にならないかなと思ったんです」
「花は枯れてしまうけれど、種の中にはずっとずっと前の花の思いが詰まっている気がして・・・」
しゃがんで花を見ている夕鈴は優しい目をしていて、自分も夕鈴の隣にしゃがむ。
「じゃあ、毎年種を蒔いて、花が咲くのを君と見よう」
「はい・・・!」
月日を重ねても変わらない夕鈴の瞳の光に誘われるように、口付けを交わした。
それから毎年、種を蒔いて花が咲くのを見つめる二人の姿があった。
年々増えていく花に、二人を見守る周りの者は二人の愛の深さを知り、この庭は大切にされ、狼陛下と唯一の妃の物語は後世に語り継がれることとなる・・・
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*** COMMENT ***
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素敵なお話(*´ω`*)
やっぱりかざねさんのお話好きだなぁ。
原作沿いほのぼの、ほんと癒されます。
永遠っていいですねえ(〃▽〃)
やっぱりかざねさんのお話好きだなぁ。
原作沿いほのぼの、ほんと癒されます。
永遠っていいですねえ(〃▽〃)
もも様
いつも素敵なコメントありがとうございます(*´▽`*)
そうです!
それが言いたかったんです(≧▽≦)
永遠は確認のしようがないけど、私たちの奥の奥、
深いところは遙か昔に繋がっていて、さらに未来に繋がっていく・・・
というような・・・完全に語彙不足;(笑)
遺伝子にしようと思ったのですが、お話が上手くいかなかったので、
お花で例えてみました。
いつも素敵なコメントありがとうございます(*´▽`*)
そうです!
それが言いたかったんです(≧▽≦)
永遠は確認のしようがないけど、私たちの奥の奥、
深いところは遙か昔に繋がっていて、さらに未来に繋がっていく・・・
というような・・・完全に語彙不足;(笑)
遺伝子にしようと思ったのですが、お話が上手くいかなかったので、
お花で例えてみました。
まるねこ様
そう言っていただけて嬉しいです~(*^▽^*)
陛下と夕鈴の日常の一部分を切り取って好き放題書いております(笑)
のんびりまったり幸せご夫婦が私の癒しでもありますので!
永遠って素敵ですよねv
そう言っていただけて嬉しいです~(*^▽^*)
陛下と夕鈴の日常の一部分を切り取って好き放題書いております(笑)
のんびりまったり幸せご夫婦が私の癒しでもありますので!
永遠って素敵ですよねv
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