風の音

春の風

2017/02/24 ≪花嫁≫
※ 途中にイラストがあります

****** ▼ 追記記事 ▼ ******

暖かくなってきた今日この頃。
後宮の庭は色とりどりの花で賑やかになる。
柔らかな風に乗って花の香りが鼻孔をくすぐる。

「今日も良い天気ですね」
「そうだね」
陛下と後宮を散歩しながら、空を見上げる。
深呼吸をすると胸いっぱいに入ってくる新鮮な空気が、身体をシャキッとさせてくれる。

「陛下!白詰草がたくさん咲いてますよ!」
庭の開けた場所に、それは見えた。
緑の葉の絨毯に所々咲く白くて丸い花。
陛下の手を引っ張ってそこへ駆け寄り、白詰草の上に座る。
逸る心を抑えながら、一本二本と花を摘んでいく。
「夕鈴、花をどうするの?」
「これで、花冠を作ろうと思います♪」
「どうやって作るの?」
陛下が興味を持ってくれて、嬉しくなる。
二人で花と少し草も摘んで、準備完了。
「これをこうして・・・」
自分の手を見せながら陛下に教えていく。
呑み込みの早い陛下は少し教えただけで、サクサクと手を動かしていく。
それを見ながらクスリと笑みが浮かぶ。

昔、お母さんにあげるために、青慎と一緒によく作ったわね・・・
草と土の匂いは下町と変わらない・・・

ぼんやりとしていたその時、
「出来た!」
ぽんっと頭に何かが乗った。
頭からそれを取ってみると、綺麗に編まれた花冠だった。
「夕鈴にあげる」
「ありがとうございます」
そうお礼をして、自分の頭に花冠を乗せる。


春の風


「次は?」
小さな子供のような瞳で見つめられて、ドキリと胸が鳴った。
「では、四つ葉を探しましょうか」
「四つ葉?」
「はい。見てください。これは三つ葉ですよね」
手近にある草を一本摘んで、陛下に見せる。
私の手には葉っぱが三つに分かれた草がある。
「稀に四つ葉があるんですよ。しかもその四つ葉を見つけると幸運が訪れると言われているんです!」
思わず、ぐぐっと両手に力が入る。
「そうなんだ。じゃあ、探してみよう」
二人で地面を見ながらウロウロとする。
「う~ん・・・夕鈴。見つからないよ?」
「よく探してみてくださいね。なかなか見つからないからこそ、見つけると幸せがくるんですよ」
二人、黙々と草を掻き分けながら探す。
「あった!」
四つ葉を見つけたのは私だった。
「ええ~・・・僕、見つけられなかった・・・」
私の手元にある四つ葉を見つめる陛下の頭とお尻に、あるはずのない耳と尻尾がペションと垂れているように見える。
「あ!でも、見つけた」
陛下はそう言って私に口付けた。
それは触れるか触れないかの優しい口付け。
「急に何ですかッ!?///」
口元を押さえながら、頭から湯気が上る。
「私の四つ葉はさしずめ夕鈴だからな」
ニヤリと笑む狼陛下に見惚れる。
「~~ッ!///」
「いつも僕に幸せを運んでくれるからね」
そっと私の手に口付ける陛下から目が離せない。
コロコロと変わる小犬と狼に挟まれて、身動きが取れなくなる。
顔を上げた陛下は、今度は優しい表情で、それに釣られて自分の顔が綻ぶ。
「私を見つけてくださって、ありがとうございます」
たくさんの人の中から“汀 夕鈴”を見つけてくれたことが、泣きたくなるほど嬉しい。

―― でもね、陛下。

「では、陛下にこれを」
手に持っていた四つ葉を差し出す。
「もらっていいの?」
少し戸惑う陛下に、クスリと笑う。
「はい、私にはもう一本あるので、どうぞ」
先ほど見つけた四つ葉の近くにもう一本あった小さな四つ葉を自分の手に残す。
「ありがとう」
そう言う陛下は笑顔で・・・。

―― 四つ葉は一人一本じゃないんですよ?

―― 何度でも、いくつも、見つけることが出来るんです。

「幸せのお裾分けですね」

―― こうやって分けることもできる。

「え?夕鈴の幸せ減らないかな?」
「それは困る」とオロオロしだした陛下を見つめる。
「幸せは分けても減りませんよ」

だって、さっきの陛下の笑顔を見た時、私は心がいっぱいになったから。

きっと、増えていく。

「たくさん見つけましょうね!」

こんな時間が愛おしくて大切。

“明日も笑顔で過ごせますように!”

そう思ったら、まるで大丈夫というように、強い風が駆け抜けた。



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*** COMMENT ***

またココロがあたたまるお話をありがとうございます(〃▽〃)
2人で花冠作るの楽しそう。陛下は意外と器用かも。楽しく読ませていただきました♪

まるねこ様

まだ春は先ですが、このようなお話にしてみました(*´▽`*)
夕鈴は子供の頃に戻って、陛下は初めての体験、なつもりで書きました。
陛下は器用そうですよね(#^^#)
何でもソツなくこなしそうです。
コメントありがとうございました。

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ボナ様

はじめまして。
遊びに来てくださってありがとうございます。
そんな風に思っていただけて、すごく嬉しいです(*^▽^*)
コメントもありがとうございます!
また遊びに来てくださいませ。

NO TITLE

幸せのおすそ分けいいですよね(*^o^*)

私も一時期四つ葉すっごい探したのに見つけられませんでした( ;´Д`)
白詰草の花冠もよく作りましたよね。懐かしいです!

NO TITLE

暖かい春の風と甘いシロツメクサの香が端々から漂ってくるようでした。

花冠が上手く作れない不器用だった子供時代を思い出しましたが(苦笑)

イラストのイメージもぴったりで、心の奥をそっと抱き締められるように穏やかに包み込まれるようなお話でした。

どうも、ありがとうございました。

花愛様

四つ葉をもらえると、本当に幸せをもらえたようで嬉しくなりますよね(*^▽^*)
四つ葉探し・・・コツあるんでしょうか・・・。
花冠、私も作りました!
どちらも夢中になりますね(*´ω`)

novello様

素敵なお言葉、ありがとうございます。
絵を思いついてお話を作ったのですが、どこか懐かしい雰囲気のお話になりました(#^^#)
春はまだですが、少しでも温かな気持ちになっていただけたなら、幸いです。
コメントありがとうございました。

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